20060605

『帰郷−小川紳介と過ごした日々』(大澤未来/岡本和樹)、ユーロスペース
もっと撮り続けて頂いて、もっと長く、深めたバージョンで見たい。あの時は村中皆酔っぱらっていたんじゃないか、という話が良かった。最後の民謡もよかった。

『底無』(小嶋健作)、ユーロスペース
現実世界の人間関係、ルールに縛られる人間が丁寧に描かれていて、やり取りのリアリティ、日常生活の不穏さのリアリティがうまいなあと思うが、そのリアリティということが映画では難しい問題のように自分には思われ、塾での保護者との場面など、普通の現実だけが日常と同じように存在しているだけなのが、物足りない。素晴らしい公園のシーンの前後、ラストの手前がもっと見たかった。1時間ある映画の後半の面白い部分が抜けている、というように見える。

バオバブのけじめ』(松浦博直)、ユーロスペース
リアリティとユーモアがあって面白いけれど、父の姑息さを細かく見せるより、父と息子兄弟の葛藤がもっと見たかった。弟がいい子になっているために、兄弟が普通に仲良しで、母のいない家庭での兄弟の関係が見えなかったのが残念だった。また父と長男がお互いに似ていることと、そのことに対するお互いの愛や近親憎悪になるような感情、それに違うキャラクターの弟がどう絡むか、がもっと見たかった。

『赫い髪の女』(神代辰巳)、シネマアートン下北沢
宮下順子がしゃぶ中で死んだ友人について語るが、それは宮下順子自身のように見えてきて、それでは宮下順子は幽霊なのかといえば、そういう展開にはなっていかない。宮下順子がせっせとしているのについて行けなくなってくる石橋蓮司の表情が素晴らしい。

『哀しみのトリスターナ』の救いのなさと皮肉、喜劇性のこと。
散歩するという自由、二差路のうちどちらでも選べるという小さな自由から恋人になる男と初めて出会う、そのなりゆきから、義父からの逃避、(散歩に必要だった)脚を膿んで、義父の下へ、元の檻へ帰るという悪夢のようななりゆきは、精神分析的すぎて鼻白む面もあるが、そういうなりゆきが現実によくあることも確かで、それが怖い。
突然服を脱ぐ場面にびっくりする。