2005-10-01から1ヶ月間の記事一覧

自覚のないゾンビ。自分がすでに死んでいることに気づいていない。何のためにこの世へ甦ってきたのか。なぜここにとどまっているのか。それが明らかになったとき、もと来た場所へ、帰っていくだろう。 コルタサルの「正午の島」や「もう一つの空」、ボルヘス…

密かな殺意が現実の可能性となって目の前に与えられる。そのときぼんやりしていた殺意がはっきりとした形を取り、自分の中にあったものに気づく。その機会を受け入れたとき、男の中で何かが変わる。ある男の死の目撃者とするために、一人の男が選ばれた。呼…

花と蛇 田中陽造脚本 小沼勝監督 複数の三角形から成る映画。その三角形では常に一人が邪魔物であり、その三角形は維持不可能なものとして別の三角形に移行し続けるのだが、最後に至って、完成された三角形となる。 主人公が三角形を壊す所から映画が始まり…

ディラン・トマス全詩集(青土社) 四巻本のディラン・トマス全集(国文社)の詩編は相性が悪くて結局読めずにいた。これは読みやすい。 黒球/江代充(書肆山田) 古い日記を拾遺したらしきもので、日付が入っているのだが、ねじれた文章とあいまって、謎め…

2005-10-25

映画授業、編集コースの一回目。 「編集(出来上がり)のことまで想定に入れて、順撮りでもない撮影時に全てのカットを決められるのはヒッチコックのような天才だけであり、それを目指すよりも、各シーン内でこれだという撮り方をしていくほうがよい。ダブら…

台風太陽

チョン・ジェウン監督 「子猫をお願い」監督の新作。 全編どこを切り取ってもアメリカのスポーツブランドのコマーシャルになるような、目まぐるしいカットの連続は躍動感を伝えて、ナイキのCM作れるくらいのセンスがあるのだなあ、と思うが、見ていて疲れる…

夏の庭 田中陽造脚本

合成の庭と本物の庭を使い分けていて、庭の大きさが変化するのが面白い。 プールのシーン(水中に沈んだ関取を先生が助けるカット)がよい。 死体を前に三人が泣くシーン、告別式、葬式のシーンが長い。 古井戸の寓意はやや物足りない。もう少しエピソードが…

2005-10-22

日本怪奇小説傑作集1・2(創元推理文庫) 特に印象に残ったもの 大佛次郎 「銀簪」(1) 山本周五郎 「その木戸を通って」(2) 幻の女もの。一筋縄でいかないあいまいさがあり、それは例えば主人公の上司の言動の書き方なのだが、それがストーリーその…

田中陽造 心の底で望み、かつ恐れていること、心の中ではリアルであるが、リアルすぎて現実には起こりえないだろうと思うこと、または本人自身が抑圧していた欲望の現実化、それが起こる。ヒッチコックの映画を見るといつもそれを感じる。田中陽造の脚本のい…

2005-10-16

家で雪の断章ー情熱ー 田中陽造脚本、相米慎二監督 田中陽造らしい話、と言っても原作があるのだし、原作を読んでいないので比較もできないのだけれど。 基本の三角関係があり、それに付随して複数の三角が存在するのは「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」と…

2005-10-15

世界/ジャ・ジャンクー 映画の主眼は北京と世界公園の風景を映すことにあるらしい。まがい物の世界と、その外の本物の北京の残酷さ。ひたすらその比喩が映像として映され、ストーリーは緩く、スケッチのように北京と公園での日々が語られる。その緩さは風景…

黄色い雨/フリオ・リャマサーレス(木村榮一訳) 「・・・しばらくして、私は理解した。どのようなものも以前と同じではない、思い出といっても、しょせん思い出そのものの震える反映でしかないのだ、また、霧と荒廃の中に消え去った記憶を守ろうとするのは…

完成した4本の映画の講評。黒沢清監督が来て下さったが、映画自体の感想は避けておられた。やはり面と向かって罵倒はしないか。 「4本の映画が死に近づきながら、なぜ誰も死なないのか」という問い。 死、モラル、葛藤の手前を引き延して見せるより、殺し…