2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

八百万石に挑む男(中川信夫)、ラピュタ阿佐ヶ谷 因果応報の道徳の話を越えられなかった印象。エモーションが生まれず、形式ばってしまった。主人公の哀しみが出て来なかった。意気地を引き出すための矛盾が曖昧。 ■ 何が起こってしまったのかわからない主…

「死者の書」は映画はともかく、話が魅力的で、現代で変奏できたら、と思う。 □ 死者への負い目を生き残っている人が負い、その鎮魂が因果のあるらしき人に託される。託された人自身が持っていた欲望と、共同体の負債が結びついて現実を超え、当の死者を召喚…

女番長ゲリラ(鈴木則文)、ラピュタ阿佐ヶ谷 個人と共同体の境界、個人と個人の接点を探り続ける女達。女番長は、共同体を脱した者たちを共同体として組織する、自己矛盾を含んだ役割を課されている。 杉本美樹の魅力爆発、唇に釘付け。池玲子の、スケバン…

死者の書(川本喜八郎)、岩波ホール 顔の輪郭の美しさ、眼の動き、まぶたの閉じ開き、着物の織りなど人形自体はもちろん魅力的で、路上や広場や邸宅で、多くの人形や馬、大道芸まで出てくるのは楽しいが、そこは手を抜いてもいいから、主人公2人と物語の表…

ヒストリーオブバイオレンス(クローネンバーグ)、東劇 後半までの流れは眼が離せなくて、カットが多すぎるのは好みではないが、即物的で悪趣味なカットが頻出する。かつての西部劇と変わりなく、ならず者から身を守るために暴力があり、不穏さと暴力が日常…

パウラ・モーダーゾーン=ベッカー展、神奈川県立近代美術館・葉山館 重いのだけど暗くはない、直接の日光ではなく薄曇りの光でこそ見える、色とトーンが、はかない淡い感覚を伝えてすごく良かった。象徴派的なものと印象派的なものが同時に存在しているよう…

シナのルーレット(ファスビンダー)、アテネフランセ すっかり老け込んだアンナカリーナが、スカートをなびかせてくるくる回り、けんけんぱをする軽やかさは変わっていなくて、そこで初めてアンナカリーナだと気づいた。アップのときの手を噛んだり目元に手…

哀れなボルヴィーザー(ファスビンダー)、アテネフランセ 人物たちは皆、理性の皮を剥がされた欲望むき出しの人間たちで、全員が徹底的に醜悪に描かれている。小市民的幸福を求めているらしい主人公も矮小化され、戯画化され、グロテスクでまったく同情でき…

女番長ブルース 牝蜂の挑戦(鈴木則文) 前作に続き面白かった。今回は池玲子の乙女ぶり、かわいらしさが強調されている。 前作と異なるのは団の規則がないことで、番長池玲子もそのことを強調する。前作では憲法があり、それが、社会から逃走した者たちに再…

「出稼ぎ野郎」「悪の神々」(ファスビンダー)、アテネフランセ。 「出稼ぎ野郎」は寝てしまった。短く10回くらい。限定された数か所が繰り返し交互に出て来て、カメラも同じ位置が多く、カットを割らず、出来事を飛ばしてドラマを排除する方法は「愛は死…

冷飯とおさんとちゃん(田坂具隆)の最初の2話を見直す。 おさんを見ていると息苦しく、めまいがしてくる。当初、中村錦之助が新珠三千代と一緒に画面に映っている時は普通に映画の時間が流れているようなのだが、新珠三千代がいなくなると、映画の時空がわ…

噂の女(溝口健二)の母娘が、いくらでも通俗的になるような葛藤において、含羞と倫理観と思いやりがあって乗り越えていって、通俗がまったく問題にならず、どんなに安っぽい男にだまされるとしても、母娘のたたずまいが傷つけられることはない。 □ 不安(オ…

国際交流基金フォーラムとオリベホールを行ったり来たり。やはり自分には1日4本は厳しい。お昼にFISHでカレー食べようと行ったら、アーク森ビル全館殺虫中で閉まっていて不気味だった。 □ 未来への迷宮(アブラムローム) 先生の居候と主人公の筋肉馬…

2006-03-18

青山真治監督の講義。省略について。 ハメットの冒頭。一見つながっているのにつながっていないシーンが、酩酊時の時間が飛んでいる感覚を示しているよう。自分は労働の充実感とその後に訪れる虚しさ、アル中の倦怠感、厭世感をに感じた。 ラルジャンで省略…

2006-03-17

「妖刀物語 花の吉原百人斬り」(内田吐夢) 赤坂国際交流基金フォーラム。吉原という異世界の仕組みやしきたりやルールが事細かに見せられ、主人公は、それを知らないために堕ちていく。宿命を背負った人物しか出て来ない。同じ依田義賢脚本の西鶴一代女す…

2006-03-16 森美術館でベルリンー東京展。あまりいいのはなかった。特に現代美術はだめだった。ダヴィト・ブルリューク「家族の肖像」の家族の立ち位置と視線、小石清の、夜の町に時計が浮いているモンタージュ、滝沢真弓の「山の家」のファンタジー、ボリス…

2006-03-15

白い指の戯れ/村川透 処女の伊佐山ひろ子が男と知り合い、「感度良好な女に違いない」と言われる。その言葉が予言のように働き、うぶな女だったのが、別の世界=犯罪と色欲のモラルを超えた世界に下降し、地獄巡りする。新宿紀伊国屋の階段が地獄行きの道と…

2006-03-14

女番長ブルース 牝蜂の逆襲/鈴木則文 古本屋で岡本綺堂と久生十蘭と中井英夫と赤江瀑の文庫を買って、夜の午睡で時間つぶしてからラピュタ阿佐ヶ谷。すばらしかった。 アテネ団の団員がみんなかわいい。ほっぺたと唇がかわいい。化粧がやけに今っぽい。逆か…

2006-03-13

歌舞伎町でサモハン(キンポー)出演の SPL を見るが、因果の綾や倫理観の提示の雑さが気になっていまひとつ楽しめない。停滞のないハイテンションな話の流れやカンフーのシーンは楽しいのだが。主人公が吊るされっぱなしというのは面白かった。 □ 家で弁天…

次郎長三国志(東宝)メモ

備忘。印象的だった場面。 第一部 喧嘩した長五郎が海から出てくる場面。桶屋の鬼吉が桶に入って桶屋と話す所。桶を背負って走る鬼吉。拳銃を撃つ綱五郎。次郎長らが朝焼けのなか、走って来る。鬼吉と綱五郎が階段転げ落ちる所。大政が、妻が去っていくこと…

2006-03-12

家で、日本残侠伝(マキノ雅弘) 死んだ長門裕之の歌った歌を、二人が交互に歌い、さらに二人が一緒に歌うところがたまらない。 花火とのカットバックで、四人が敵討ちに向かう。 お祭りみこしが揺れる中で、敵討ちが行われ、生死が交錯する。祝祭と弔いの表…

新文芸座でロマンポルノのオールナイト。三つ見て疲れて帰るが、どれも素晴らしかった。 (秘)色情めす市場 フィルムでは初見。すごい迫力。全てのカットにエモーションが封じ込められているよう。芹明香がほっつき歩いているだけでいい。全部いい。近親相…

別のフロアにいる、20代半ばの女の人で、すごい未亡人感を放っている人がいて、たまに見かけるのだが、気になって仕方ない。ほっそりした柳腰の、勤め先でもかなりきれいな人だと思うのだが、見かけるといつも、細い体に地味なグレーの服を合わせていて、…

日本怪奇小説傑作集3、ようやく読み終わり、とても良かった。 特に良かったのは、影人/中井英夫、幽霊/吉田健一、海贄考/赤江瀑、ぼろんじ/澁澤龍彦、大好きな姉/高橋克彦。中井英夫全集2を買う。 ■■■ 次郎長三国志 第三部、第四部(東宝) 第三部。…

朝眼を覚ますと、鶴田浩二の間投詞が生々しく耳に残っている。覚えていないが、鶴田浩二の夢を見ていたらしい。 次郎長三国志(東映版)で、鶴田浩二が発する「おう!」「おう?」「ほー」「ほう」という短い間投詞が、映画中で果たす効果は大きい。意味の限…

次郎長三国志 第一部、第二部(東映版) 一部、二部は次郎長が売り出すとこでとにかく楽しい。テンポがよくて歌の入るタイミングが素敵。次郎長はじめ、子分たちは他に行き場のない者たちであり、その業や運命を受け入れた上でやくざになっている。 (特に自…

次郎長三国志 第八部(東宝版)続き 政五郎の役割。初盤で石松は、旅の道連れの政五郎の言葉によって恋への憧れを持つことになり、別の世界への道が開かれる。この場面は同性愛感が濃厚に漂っている。それはやくざの世界=女のいない世界での石松の人間関係…

次郎長三国志 第八部、第九部(東宝) 八部すごい。今回も祝祭と死が同時に起こる。 全体にそうだけど、とくに最後15分くらいは夢のようで、最後の数カットは完全に夢の次元に入っているよう。「サンライズ」のようなサイレント映画に見られる、夢の、現実…

タイトル変える。 □ 次郎長三国志 第六部、七部(東宝)。 冠婚葬祭感が強烈。六部はやや辛気くさいが、そのせいで七部では、弔いのムードが映画を覆って異様。合間で唐突にお祭りになるのも。祭りと弔いが交互にやって来る。同時に現実的な、家族の再構成の…

備忘。5日(日)夜10時からBS1で「ダーウィンの悪夢」 □ ラッシュ。テイクを重ねた重要シーンを主に見る。屋外でもセリフがきれいにとれている。微妙な演技の違い。現場で見るよりカメラの方が細かく表情を捉えている。現場では見れていない。全てにお…