女番長ブルース 牝蜂の挑戦(鈴木則文
前作に続き面白かった。今回は池玲子の乙女ぶり、かわいらしさが強調されている。
前作と異なるのは団の規則がないことで、番長池玲子もそのことを強調する。前作では憲法があり、それが、社会から逃走した者たちに再び規則が現れるという矛盾になる、という屈折があったのが、今回はなくなっている。規律がなくなったため、団内部の対立はなくなり、池玲子以外の団員の存在感は薄れている。
今回も複数の集団/個人の思惑が入り乱れ、対立と融和と瓦解を経つつ、悲劇に向かっていく。面白いのは、各人に自分なりの言い分、倫理、美意識があって、それに対するジャッジはなく、それぞれが自分のルールに基づいて行動することで、それぞれの孤独と、それを越えようとする力が出て、それが誰にもどうしようもないドラマを生んでいく。敵役である小池朝雄すら、戦後日本へのルサンチマンを口にし、それがただの自己弁護ではない力を持っているように思う。
基本にあるのは貸し借りを0にしていこうとする力だと思う。その力の前で、他のことが問題にならなくなっていき、人物は、大切なこと=自己の倫理以外のことに対しておおらかになっていくようにみえる。池玲子が母親と会って、クールな言葉を聞いて納得するのも、風間千代子が池玲子らを逃がすのも、宮内洋が風間玲子の死に報いようとするのも、荒木一郎がせこい男なりにできる範囲の誠意を見せようとするのも、池玲子の最後の復讐も、個人の倫理が葛藤やどうしようもない成り行きにぶつかり、最後に貸し借りを帳消しにしようとする行為で、しかし貸し借りが0になることはないだろう。ただその行為が胸を打つ。
最後の復讐は恨みを晴らすというより、なすべきことをなす、というように見える。なかなか機会を見つけられなかったのが、ふいに密室として現れる回転ドアの使い方がよくて、途中でセットに変わり、画面手前を血が覆っていくのが、リアリズムを超えて別の次元に移行している感じが出ていてとてもよかった。一番最後のカットで子分たちが消えているのもよかった。
1つ納得いかなかったのは池玲子が処女だったことで、前作で世間の処女崇拝を壊そうとしていたのに、なぜだろうと思った。
それから杉本美樹がやられっぱなしだったのが不満。借りを返す場面が欲しかった。山城新伍が女風呂に入った水中の主観ショット、馬鹿馬鹿しくて面白かった。岡八郎由利徹もよかった。大泉滉の出番少なかったのは残念。

先日買ったナイトメアズオンワックスの新譜はだめだった。軟弱。