死者の書」は映画はともかく、話が魅力的で、現代で変奏できたら、と思う。

死者への負い目を生き残っている人が負い、その鎮魂が因果のあるらしき人に託される。託された人自身が持っていた欲望と、共同体の負債が結びついて現実を超え、当の死者を召喚する。死者を含む三角形。

神獣の爪(鈴木清順) 
やはり不思議なぎくしゃくした現実感の崩れるカットのつながりが、人がぬっといる感じを作る。妖怪か幽霊のような、いきなりそこにいるような存在感。カットの切り替わりとアクションのタイミングの関係、切り返しの位置関係、がそれを作っているようだが、どうすれば真似できるのかつかめない。
ひとまず現実として起こっているできごと一つ一つも、夢のようなきれぎれの現実感。
さまよった関口宏が過去の因縁の現場に迷い込み、眼の前で過去が再現され、時間と世界の現実が壊れて足下が崩れていく。
冒頭の借金がらみのやり取りからしておかしい。いびつな、冷笑的な強者と弱者の人間関係。
悪女のような少女のような大谷直子が相変わらず魅力的。しかし果たした役割がいまひとつ、つかめなかった。
一度見てもつかめない。真似したい。