2006-03-13

歌舞伎町でサモハン(キンポー)出演の SPL を見るが、因果の綾や倫理観の提示の雑さが気になっていまひとつ楽しめない。停滞のないハイテンションな話の流れやカンフーのシーンは楽しいのだが。主人公が吊るされっぱなしというのは面白かった。

家で弁天小僧(伊藤大輔)。面白い。陰謀が渦巻き、悪漢がうごめく迷宮のような江戸の町。弁天小僧が逃げ回る舞台の、どこにでも続いていく屋根。出てくるのは悪漢ばかり。弁天小僧に絡み付く岡っ引きの縄。語りの楽しさ。冒頭15分の、めまいがするような話者の交代する展開。話が予定から外れ横滑りしつつ別の因果につながっていく。弁天小僧が大金入手の計画を語り出し、それが歌舞伎の舞台として行われる楽しさ。
モノを映すアップのカットが印象的。市川雷蔵の所作の美しさ。すそをまくって座り込む動作など。勝新は出番少なく地味だった。
身分制と金銭の支配の間のあつれきが映画全体に行き渡って、人物たちを翻弄する。弁天小僧は父親の貧乏によって捨てられ、その父親は呉服商として成功するが、今度は金銭を狙われて娘を、望まぬ結婚に出さざるを得なくなる。貧しくても豊かでも金銭に翻弄される点においては変わりがない。武士にしても金銭が支配する世界で身の置き所がなく、唯一残った身分を利用してたかるしかない。与えられた世界から抜け出すことのできない人々の、行き場のない虚無が弁天小僧を生んでいることが映画の中でわかる。冒頭で、博打ですってんてんになって刀を渡した武士が、自分の身分を掛け金にしようとして断られ、最後に武士のまげをかけようとするシーンが映画の背景を語っている。一人遠山金四郎のみが、身分制と金銭の支配の間に調整をつけることができるらしい。