次郎長三国志 第八部(東宝版)続き
政五郎の役割。初盤で石松は、旅の道連れの政五郎の言葉によって恋への憧れを持つことになり、別の世界への道が開かれる。この場面は同性愛感が濃厚に漂っている。それはやくざの世界=女のいない世界での石松の人間関係のありようでもある。
終盤、政五郎がお面をかぶって石松と再会するところでは、その後の不幸な展開を予告する、不吉な存在になっている。
最後、政五郎の割れたお面が何度も映り、石松の開かれた眼と対比される。意味を超えて、すごいエモーションをもっていて、感動する。
やくざの世界しか知らなかった石松が、女のいる世界に眼を向けたとき、やくざの世界によって殺される。もう一つの眼が開く時が、死ぬときでもある。
政五郎が石松の、別世界への道筋をつけると共に、死も呼び込んでいる。石松の通過儀礼幼年時代の死は、次郎長一家の幼年時代の死となって九部につながり、大人としての一家の、社会的責任や他の勢力との関係が描かれるようになる。