新文芸座でロマンポルノのオールナイト。三つ見て疲れて帰るが、どれも素晴らしかった。
(秘)色情めす市場
フィルムでは初見。すごい迫力。全てのカットにエモーションが封じ込められているよう。芹明香がほっつき歩いているだけでいい。全部いい。近親相姦シーンの夜から朝への光の変化。娼婦のメタファーとしてのダッチワイフの使い方。ダッチワイフにガスを詰めた萩原朔実が宮下順子と男を追っていくシーン、爆発まで、音楽含めてたまらない。萩原朔実の「その女、返せよ」という台詞に、女をモノとして扱っている感が出ていた。
母親に絶望した後の獣姦される芹明香の動きに合わせてカメラが前後する顔のアップ。
宮下順子のひもになる男の台詞もおかしく、ミニ扇風機自分に当ててるのとか、喫茶店でみんなのコップの水飲む所とか、細部までキャラクター立ってる。
花柳幻舟の母親も強烈。いくつかの母娘のやりとりで、芹明香と弟の置かれている状況が見える。「お前の父親の顔が見てみたい」と娘に言うところは強烈で笑った。近親相姦シーン以降、ファンタジーに転換して、弟が死んだら誰もいなくなったと芹明香が言う。ラスト、自分を線香立てにするのも最高。
100年後に見てもかっこいいと思う。サントラも欲しい音楽も最高。
黒薔薇昇天
岸田森谷ナオミがおかしい。タクシーの中でも傘を差し、どこにいてもすぐ飛び降りようとする谷ナオミ。自分が乗っかる、絡みシーン用のガラス板を男優が黙々と背負って運ぶのが印象的。
大江戸浮世風呂
悪漢もので、聖と俗、美と汚辱の二元性とその反転、転換で成り立っている。人物はみな矛盾した存在で、自分の欲望に翻弄される。元お稚児の坊主が色と欲にまみれていく様や、将軍の愛妾が落ちていく様が、ギャグ映画を越えて壮絶さを出している。聖―俗転換装置としての便所の使い方。半分男、半分女に変装した河原乞食の芸が映画の二元性を象徴していて、田中陽造らしい。