2005-10-22

日本怪奇小説傑作集1・2(創元推理文庫
特に印象に残ったもの
大佛次郎 「銀簪」(1)
山本周五郎 「その木戸を通って」(2)
幻の女もの。一筋縄でいかないあいまいさがあり、それは例えば主人公の上司の言動の書き方なのだが、それがストーリーそのものとあいまいにつながっており、そこがすごくよかった。「おさん」の行きずりの子供と同じ感じ。

おんなの細道 濡れた海峡 田中小実昌原作/田中陽造脚本
ストリッパーと恋仲になった男が、彼女の亭主に会いに行った地方で出来事に遭遇して、再び町を去る。その町というか地域が主人公にとってイニシエーションを経験する場であり、映画自体がそのイニシエーションを見せることになるのだろうけど、では主人公が何を経験したのかというと、いま一つ判然としない。しかし判然としないことが悪くはなく、考えさせられる。しかし考えてもよくわからない。簡単に言えば女とは何か、男女とは何か、ということを知り直す、ということなのだろうけど、そういう言葉にしたところで腑に落ちるわけではない。
主人公が遭遇するのは、女の亭主(やくざ)、行きずりの女1、女1の恋人の漁師、行きずりの女2、である。女の亭主がやくざなのだが怖くない、しかしその怖くなさが怖い。得体が知れない。主人公は手下のチンピラに歩かされ、女が殺されるから逃げろ、と言い、逃げる。あれは本当に殺されかけていたのだろうか、わからない。
主人公が、女の抜けた歯を大事に持ち歩く。口に含んで弄んだりする。それは女の分身であり、主人公の女に対する関わり方を示している、と当たり前のことを書いても、何も納得できない。