『女の小箱より 夫が見た』(増村保造
田宮次郎が運転する車の後部座席に若尾文子が乗っていて、田宮次郎がカーステ入れると偶然ベートーベンが流れ、田宮がベートーベンの音楽の情熱性を誉める、その時、うつむいていた若尾文子が初めて顔を上げる、その時に、若尾文子の欲望が動き始める。といっても若尾文子がすぐに欲望を表に出すわけではない。
特に男たちなど類型的といえばこの上なく類型的なのだけど、4人それぞれの思惑が蠢き、陰謀をめぐらす、その下に水脈のように情念が流れ続けているのが、面白くて仕方ない。