「ブラックダリア」(B.デパルマ監督)
昨夜、粕谷栄市の「化体」を読んで記憶に残っていた。
「今更、言うまでもないことだが、死んだ魂の記憶の世界では、どんなことでも起こりうるのだ。もちろん、その街で、非常に孤独に日々を過ごしている男の、何かに、深く、血の滲む夜にのみあることだ。」(月明)
散漫な出来事の羅列、唐突な展開、全てが、死んだ魂をもった、ジョシュハートネットの脳髄の夢なのだとしても、ヒッチコックのように悪夢の世界に堕ちていく男の甘美さを、流麗な画面はドラマとはちぐはぐで、まったく映し出してはいない、マゾヒズムの感覚が出てこない、それでも、その散漫さ自体が、ジョシュハートネットの眼に映る混濁した世界の姿なのかも知れない、ような気もしてくる。
しかしジョシュハートネット以外の役者はよくなかった。特に女性二人は役と合っていなくて、ファムファタルの魅力がない。