玉割り人ゆき 西の廓夕月楼
ラピュタ阿佐ヶ谷。玉割り人というキャラクターが生かされなかった。主役のゆきがうまく映画に絡んでいない。田中陽造らしいディテールの面白さは各所に見られた。くろづかの歌はあまり生かされず。女の執念がゆきに伝わっていかないので、後半が盛り上がってこない。
冒頭、ほとんど白痴のような伊藤晴雨と出会う所、次の性技を披露する所、墓場でのセックスまではとてもいい(蝶の使い方が田中陽造らしい)が、そこからゆきの存在が希薄になっていく。墓場での気まぐれのセックスと(蝶=魂の抜けた状態=人形)、相手を好きになってからのセックス(魂のあるおんなとして)の違い、それに玉割り人という仕事がどう関係するかが描かれない。そこから男に執着する女との関わりにつながっていかない。伊藤晴雨が、女が娼婦になった話をゆきらにするところがあるが、あそこは晴雨の顔が見たかった。おそらく、不気味な表情をしているはず。SMプレイ中の晴雨にも凄みが感じられず、晴雨の怖い部分が見えなかったので最後の部分が効いてこない。蝶=人の魂というモチーフは全体に生かされ、良かった。