日々是怪談/工藤美代子(中公文庫)が面白い。
「里帰り」「じゃあ死んだら」特に「夢の出口」は傑作と思う。村上春樹の「東京奇譚集」はちっとも奇談ではないと思う。話がコントロールされすぎて奇談になっていない。奇的なものを統制しようとする作者の意志が働きすぎていて、奇的が失われている。まあもともと比較するようなものでもないけど、奇譚という言葉が気になる。津原泰水の「綺譚集」は正しく奇譚と思うが。このエッセイ怪談の、投げっぱなしな感じと、作者の日常の重なり具合が、エッセイの文章で書かれたとき、自分自身の人生や日常のすきまにある何か、が奇的なものとして感じられ、背中がすっとする。