エリエリレマサバクタニ青山真治
ユリイカの続編と思う。話と映像が素晴らしく、それだけに部分(ドラマの進行)に不満を感じる。
冒頭20分くらいは素晴らしくて泣きそうだった。しかし中盤の、ペンションで出会う所でテンション下がった。あそこはよくないと思う。特に探偵のふるまい。視線の交錯がないのも。宮崎あおいの存在感が消えている。全体に、昔の探偵映画へのオマージュのような探偵が、映画の中で生きていなかった。役者とキャラクターはいいのだが、役割を果たしていなかった。
鶴見慎吾が出る場面は吉田喜重のようなカット割りだと思った。
草原のシーン素晴らしい。ギターとアンプが世界の細部を増幅させる。感知すること=生きること。そのための儀式。召喚。
人物のエモーションを伝える映像と音はすごくよくて、ロックだと思う。ユリイカで二人だけになってからのあの映像と同じ。
生きることを選択することに対する態度。善悪ではなく、生きるか死ぬか、どちらをその個人が選択するか、それだけだという。
ユーモアの取り入れもよかった。ぎこちないけど面白かった。
レイクサイドマーダーケースにもあった落下する女。ユリイカにもあった、眠り=死/起きること=再生。
不満はあるけど、こんな映画を見たかった。
説明的なドラマの部分は、青山真治監督については、自分はあまりいいと思わない。もう映像と音だけで全て伝わるから、カルフォルニア・ドールズやビリーザキッド21歳の生涯のような映画を撮ってほしい。
アメリカの友人へのオマージュかと思った救急車の走るシーンの美しさが忘れがたい。特に、二人の元に向かう救急車に、併走していたカメラが離れていく画面の美しさは思い出しても涙が出そう。しばらく並んで飛んでいた鳥が、すっと離れて空に向かっていく、その鳥からみた映像のような。

見終わった直後は上記のような感想だったが、じわじわと体に効いてきて、再度見直し、この映画は現在、自分にとって最も重要な映画の1つと思うに至る。

風とともに散る/ダグラス・サーク
複数の人間関係。全ての人間が異常で、それらが絡み合ってドラマが生まれる。しかしロバート・スタックの思い込みの強さ、陰惨さはただごとではない。スタックのロックハドソンへの怖れ。そうでありながら、二人が普通に親友だったらしい子供時代を取り返せないものとして想い続けている。なぜあそこまでバランスを失っているのか。「アッシャー家の崩壊(ポオ)」で屋敷が壊れず、兄妹が死ななければ、このような話になっていたのかもしれない。