今回の撮影は自主映画製作のモデルを見せてもらったと思う。時間的、金銭的、人的に条件があるなかで、制限のある中でどこを大切にしていくか、それは、映画のなにを大切にしていくか、ということだと思う。
役者とスタッフが泳げる映画の制作状況を整えること。人の力を映画に生かしていくこと。

演出の現場で見たものと、映像として映ったものと、それがつながったものでは、それぞれの間で差が出てくると思う。そのずれを見ていきたい。かなしい、ということをどの程度表現するかということに、その差が現れてくると思う。
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「・・・歴史とはこのうえもなく根深い制限であり、根本的な制限であるからだ。人間的実存の条件たる時間は何よりも、とり返しのつかないものの条件である。ある事柄が成就されると、それは逃れ去る現在に持ち去られて、人間の支配を永久に免れるのだが、にもかかわらず、それは人間の運命に重くのしかかる。・・・真の自由、真の始まりがあるとすれば、それは、つねに運命の頂点にあって永遠に運命をやり直すような真の現在を要請するであろう。」
ヒトラー主義哲学に関する若干の考察/レヴィナス