木乃伊の恋(鈴木清順
口述筆記というのは魅力的。時代編、最初に鈴の鳴る音は主人公しか聞こえていない。最後の10分くらい、妄想が伝播し、幻想が現実になる。

棒の哀しみ(神代辰巳
恋人たちは濡れた、で死に損なった主人公の20年後の話なのか、だから幽霊で、死なず、射精しない、幽霊でありながら処世術を覚えた中年。ごく当たり前にやくざ世界でのし上がるための努力をしているが、裏腹に、破滅衝動が顔を出す。子分に止められても散歩をやめない、惚れかけた女を貶める、自分が刺される手はずなど、現世への絶望感が覆っている。全ての場面に死臭と不穏さが漂って、いつ死んでもおかしくない、誰に殺されても不思議がない状態だが、死なない。
独り言を言う癖がいい。意図的な行為―独り言―無意識のつながり。
永島暎子の変態性欲は、嗚呼!女たち猥歌の中村れい子のようで、世界、身体への呪詛のようなマゾヒズム
暗転による省略を頻用する編集もよかった。
時間のよどみや、倦怠の感覚を、停滞せず生き生きと見せる、行為が本人の意識を越えた無意識を示す、というのが成し遂げられている。

島尾敏雄編集の「水底の女」ようやく読み終わる。