20060514

暖春(中村登)、ラピュタ阿佐ヶ谷
里見とんと小津安二郎が残した原作の映画化だそうだ。
小津でおなじみの場面と話の進みだが、悪い意味で、人のえげつなさ、品のなさが際立って見える。かといって、小津の映画ほど、それがはっきりと示されているというわけでもない。消化不良にいやな感じが残る。
中村伸郎杉村春子らにはあるような、愛嬌がないといえばいいのか。やれやれこの人はこういう人だから仕方ないな、という苦笑いにならない。
小津の人物たちがえげつなかったり陳腐な言動をしても受け入れられるのがこれはそうならないのは、人物造形の作り方が浅いからなのか、役者への演出の問題なのか、森光子などキャラクターも明快でユーモラスなのだが、演技力を見せつけてられているだけのように見え、どうも安っぽく見えてしまう。他の役者も演技してます、という感じばかりが印象に残る。
男と娘かもしれない女が、深夜に男の作ったカップラーメンを食べるなんて素晴らしい場面と思うのだが、男に愛嬌がないため、ちっともいいと思えない。
三宅邦子だけが光っていたのは小津の映画でやっていたのと同じ演技がしっくり馴染んでいるためと思われ、長門裕之などいいが、映画となじんでいるかどうかはわからない。
母娘の愁嘆場が2回あるのも乗れず、白々しい気持ちになってしまった。しかし映画館のあちこちからは観客のすすり泣きが聞こえてきた。
ゆっくり移動するカメラは魅力的。