ラヴ・ストリームス
3回目くらいで、以前見たのは2年くらい前と思うが、記憶と全然違う。最初のカットだと思っていたカサヴェテスの引きつった笑顔のアップは存在していなかった。ミニーとモスコビッツと混ざっているのかもしれない。しかし他にも存在しないシーンが記憶の中にあって、別のヴァージョンを見ているのかと思うが、同じ店で借りたビデオだから同じはず。フランスでDVD発売されたらしい。今回見直すとほとんど全編ギャグ映画だった。
以下メモとしてストーリー記載。
1 
ロバートが秘書と子供を家に連れ帰ると、家にはヒッピー女たちがたむろしている。秘書は自分はメイドではないと怒っている。荒れた室内。女たちは金で雇われているようで、ロバートが彼女たちの話を聞く。「女には秘密がある・・・」という映画中何度も口説き文句として使われる口癖。以降、この文句が出てくると笑ってしまう。
2 
サラは離婚調停中で、すでに娘と暮らすことが決まっていたのに、調停内容に反することを言い、雲行きが怪しくなる。病院に何度も入院していたらしい。場違いなことを言う。
サラと世間(裁判所の担当者)の関係。彼女が不適応者であること。自分が陽気な人間であること(cheerfulであること)に拘泥する。
3 
クラブでロバートが黒人歌手を見て気に入る。ゲイに誘われる。ロバートが夜の人であること。性的魅力のある人間であること。
4 
しばらく後の離婚調停で、娘は父親と一緒にいる。サラが遅れて入室。いきなり変。娘が父親と一緒に暮らしたいと言い、傷ついたサラは部屋を出て倒れる。
サラのずれと家族との齟齬。「ママの人形(スレイブ)になりたくない」という娘の台詞。
5 
閉店後のクラブでロバートは先日の黒人歌手と飲んでいるが、べろべろになって絡み、彼女を怒らせる。無理やり彼女の車に乗り、他の車にぶつけ、カーステ爆音にして、迷惑かけまくり。怪我をして血まみれで彼女の部屋に上がりこみ、ソファで寝る。彼女は娘と母親と暮らしていることがわかる。翌朝、母親に礼を言い、去る。
ロバートと女の関係。孤独で女好きで、女からそれを許される人間であること。
6 
サラは精神科病院にいて、医者から旅行と男探しを勧められる。
7 
黒人歌手がロバートの家に来て、また会いたいと言う。このシーンは必要か疑問。
8 
サラはパリの空港に着いているが、すでに馴染めず、空港からアメリカにとんぼ返り。空港職員に悪態つく。空港から元夫に電話し、冷たくされる。
9 
ロバートの前妻が子供を連れて来る。一日預かってくれといわれる。息子はロバートに期待するが、傷つき逃げ出す。ロバートは女たちや秘書を家から出す。大人ぶってビールを飲む息子。
10 
タクシー2台に荷物載せてサラがやってくる。心のこもった抱擁。
11 
ロバートは子供を連れてラスベガスに繰り出すが、車酔いした子供をホテルに閉じ込めて遊びに出る。子供は傷つき、元妻の所に返すと、子供が玄関ドアで怪我をし、勘違いした元妻の夫からロバートが殴られる。元妻はロバートと子供を通じて関係を再開したいが、ロバートは断る。
12 
家に帰るロバート。黒人歌手の家から電話があったとサラに聞き、サラに寝るように言って再び家を出る。
13 
サラは寝られず、家に電話する。傷つき、ボーリングに行って男と知り合う。
サラと世間。適応できない。
14 
ロバートは黒人歌手の母親と踊る。母親は花をつけ、着飾って楽しく踊る。彼女が男と戻ってきて母親の恥ずかしい様に怒る。ロバートが帰る。
15 
深夜、ロバートとサラが語り合う。サラの娘から電話があり、サラが傷つけられる。電話子機で聞いていたロバートは慰めようとするが、拒否される。
16 
翌日、サラはペットショップにいる。ロバートに子供が必要だと言い、ポニーや犬やあひる、ひよこ、山羊を連れ帰る。ロバートがあきれ、サラは倒れる。
近親相姦の禁止と擬似家族。
17 
医者を連れてくるが、追い返し、動物たちを部屋に入れるロバート。サラは家族の夢を見る。彼女が陽気で、家族を笑わせようとする夢。
18 
嵐が来て、サラは再び夢を見る。ロバートはサラにずっと一緒にいようと言うが、サラはボーリング場の男を呼び、ロバートは幽霊を見る。サラは嵐の中、男と共に出て行く。

全てのシーンで、徹頭徹尾、人間関係の失調が語られる。コミュニケートしようとしながらうまくいかないエピソード。片方がつながろうとするともう片方が逃げる。または伝達方法を間違えて自滅する。
ロバートが犬と間違えて見る幽霊。何者なのか。
ロバートはもてもてだが、あそこまでもてないほうが面白かった気がするのだが。

近親相姦を禁止されているために、現実世界で彷徨う姉弟の物語。「切られ与三郎」を想起。
二人が姉弟であることは一度も語られない(と思う)。
ペットショップでサラが誰へのプレゼントなのか聞かれるが、彼女ははぐらかす。ロバートは息子から誰なのかしつこく聞かれるが、答えない。二人は、二人の関係がどう名指される関係なのか、答えない。姉弟と口に出すことで何かが決定的になることを怖れている。