母権制という言葉を簡単に使うが、実際は定義などまったくわかっておらず、今さら、自分にとって重要なことらしいと気づき、最低限のことくらいは知っておく必要があると感じる。
母権論(みすず書房)、バッハオーフェン論集成(世界書院)、グレート・マザー(ナツメ社)
「ヘテリズム」という言葉を知る。ヘテイラ=遊女から来ている、婚姻なしに、不特定多数の男性と交わり、子をなす社会、つまり、男は誰であっても構わないという社会。それが実在したのかは定かではない、らしい。

家族の選択(鈴木清順
火曜サスペンスでも変わらない。詰めた画面で画面外の人物を消すが、画面外ではなにかが起こっている。消えていた人物がふいに登場し、アクションが飛ばされ、全ての人物が幽霊のように見えてくる。ただし、細部はどこまでも面白いし、ギャグ満載なのだが、空中分解したのは作品のほうなのか、自分のほうなのか、呆然としてしまった。奇妙な遺言というのが魅力的で、愛憎関係が大量に錯綜する中盤まではぞくぞくしたのだが。冒頭の母子の戯れの濃厚なエロチズム、妹愛の兄の傘の武器、身動きできない人間、死者が生者の世界をコントロールするなど、ツィゴイネルワイゼンを想起させるが、一応サスペンスドラマということで、無理やり収束させて落ちをつけているところがすごい。
元大物弁護士の老人と介護の女性がいまわの際に二人きりになり、男がその女性の深いところにある欲望を読み取り、代理の復讐を宣言する、女性はそれを拒否するが、もう後には戻れないと老人はいう、突然看護婦らが現れて老人を運び去る場面が特に好き。