悶絶!!どんでん返し(神代辰巳)をDVDで見て、面白くてたまらなかった。来月下北沢で上映がある。
鶴岡修がヘテロ/ホモを超えていき、レズビアンの女に「お姉様」と言わせながら、男としてセックスする場面が最高。しかしそのまま化け物じみていき、皆から恐れられていくわけではないお気軽さ。全てが善悪の彼岸の残酷な遊戯のようで、陰惨さにならないのがすごい。感情の変化を示す場面がなく、出来事だけが積み重なっていく感じがいいと思う。
アパートの軒先のアヒルの玩具とか、階段を使うアクロバティックなアクションの数々とか、最後の犬の散歩など、細部も一々楽しい。
役者も皆素晴らしい。谷ナオミもヘラヘラと脱力していてなにを考えているのかよくわからず、恐らく何も考えてなくて、快・不快だけで生きていて、男二人と一緒にスケバンらに馬乗りでお仕置きする場面などおかしくて仕方なく、これまで見た中で一番かわいかった。
音楽も最高。藤圭子のCDを買いにいこうと思う。
それから、サドを読まないといけないと思い、本棚の奥から引っ張り出す。

昨日テレビで初めて、男はつらいよの第一作を見たが、寅さんのキャラクターが本当に屈折している。早くに母親を失い、兄は模範児で、いじけてひねくれた次男の悪餓鬼がそのまま中年になっていて、無自覚なコンプレックス、卑屈さが吐き出され続けて本当に迷惑で、子供なら叱ればすむが、大人だから手に負えなくて、同じような出自でも意外とまともな大人になって失速していったトリュフォーのドワネルとはだいぶ違う。
すぐ糞尿の話に行くのも鬱陶しい子供そのままで、人が嫌そうな顔をすると、気づかぬふりしてますますうれしそうに言いつのる。
逆に麦わら帽子をかぶって紐があごにかかっているアップや、家を出て路上に出ればガキ大将そのままに生き生きと口上を述べる所、押し入れに丸くなって入っている場面は、悪餓鬼のまま大人になってしまった人間の哀しさやかわいさを感じざるを得ない。しかしグロテスクとも言える。

そういうのは自分の子供の頃にもいて今もすぐに顔が思い浮かぶ。喧嘩ばかりして粗暴で恐れられているが、親しくなれば人懐っこく、すぐ首に腕を回してくるのが鬱陶しいが、怒ると怖いしいつ怒り出すか見当がつかないのでこっちも相手に合わせてにやにやしているより他ない。妙に気に入られて駄菓子を気前良くくれたりするが、その直前に他の子から小遣いを巻き上げたりしてるのも見ているので困ってしまう。少し垢抜けた女の担任に嫌われると、逆にいじめて教室で泣かせてしまったが、なぜか本人も泣いて教室を出て行ったのを思い出す。

鬱陶しさもかわいさも、素直でない微妙な年頃の少年(しかし見た目は不細工な中年)という、同じ所から来ていて、その出方によってどちらにもなる、そのキャラクターの強固な一貫性はすごいと思う。
恐らく子供の頃からさくらに母親/女性を投影し、求めていた寅次郎と、それを受け入れているさくらの関係がはっきりしており(おいちゃんに殴られた後、横に座って、汚れた手ぬぐいで顔を拭いて真っ黒になるのを見てくすくす笑う)、さくらの縁談を壊し続ける寅次郎は母親の再婚を邪魔する息子のように見える。
1話目はさくらが結婚するまでの話なのでそのことが明確で、実質のヒロインはさくらで、さくらが結婚するのだからこれで寅さんの話は完結している。
しかし結婚式には素直に出ているし、暴れたりしないのは、なんとも言えない、ちょっと変な感じがする。このあたりで、大人(世間、常識)と子供の間で、寅さんがどう動いていくのかが恐らく難しい所になっていて、自分が高校生くらいまでテレビで見て知っていた寅さんというのは、やや短気で口は悪いがとんちんかんで気のいいおじさん、というイメージになっているのは、大人側を選択してしまっているイメージなのだろう。その萌芽が結婚式の場面に出ているように見える。
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カニエウエストやリトルブラザーのヒップホップがぬるいFMのようでなじめない自分としては、相変わらずのゴーストフェイスキラーの新譜はありがたい。とてもよかった。元気が出る。