泉鏡花「幻往来」を読んでいると、仕事先のすぐそばの辺りが出てくる。寺は今もあるし、坂の名前も同じで、警察署も同じ場所にある。「豊国の前を通って」とあってなにかと思ったら昔流行った牛鍋屋らしい。今は自動車がひっきりなしに通る坂道を、「幻往来…

京橋の映画美学校の上映会で5本の映画を見て、どれも素晴らしく面白かったが、最後の「西みがき」に深く打たれた。今でも思い出して震えるような気持ちになる。 小津の「晩春」を見るといつも、「その後」のことが気になる。あの原節子の結婚生活はおそらく…

だいぶ前、写真展をやったことのあるギャラリーから、毎週、写真展お知らせのダイレクトメールが届く。帰宅し、ポストに溜まったチラシの束を捨てようと手に取った下に一枚、そのお知らせの葉書が残っていた。チラシと一緒にごみ箱に投げ入れる前にちらと見…

「百年恋歌」 あらゆる瞬間が美しく、哀しく、はかない。スーチーの全ての瞬間が、かげなえなく美しい。現代の悲痛さが、過去のたあいないといえばたあいない2つの物語ともいえない断片によって、際立つ。逆に現代編が終わった時、シンプルきわまりない最初…

「銃撃」(モンテヘルマン監督)、奇妙な映画だった。時間の飛ばし方、つなぎ方がとてもよく、微妙な人間関係などかなり面白いが、やや物足りなかった。簡素な中に謎を孕んでいくのはとても好きだが、情報量削りすぎたか、ウォーレンオーツと女の間にもう少…

「ブラックダリア」(B.デパルマ監督) 昨夜、粕谷栄市の「化体」を読んで記憶に残っていた。 「今更、言うまでもないことだが、死んだ魂の記憶の世界では、どんなことでも起こりうるのだ。もちろん、その街で、非常に孤独に日々を過ごしている男の、何かに…

「ぽんこつ」(瀬川昌治監督)、見ることがそのまま幸福な映画だった。

「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」を見た。物足りない場面もあるが、最近のアメリカ映画で一番良かったかも知れない。乾いた叙情にペキンパーを思う。ストーリーはファンルルフォの短編を想起させる。死体が映る場面が出色。最後にもう一度見せて…

女と寝る夢を見た。 薄暗いベッドの上で自分は横になって女を見ている。そばで全部脱いだ女がなにかするために部屋の奥に向かう。その時、お尻が真っ赤に輝いている。ステンドグラスのように赤く塗られた窓から朝日が射し込んで、ちょうどそこに当たっている…

「モダン・パラダイス」(国立近代美術館)に行く。 「亡霊」ということばかり気になっているので、得体の知れないものが出てきそうな気配をはらんだものにしか注意が向かない。デ・クーニング「風景の中の女」、吉田克朗「触」、小出楢重「ラッパを持てる少…

「吉屋信子集 生霊ー文豪怪談傑作選」「鬼火/底の抜けた柄杓(吉屋信子作品集)」読む。しんしんとした気持ちになる。「生霊」「生死」「鬼火」「童貞女昇天」など。()の奇妙な使い方。

「レディインザウォーター」を見た。 ロードオブザリングが長い時間とスペクタクルで見せたものを、短時間で、低予算で、現代で、全てを1つのアパートメントでやろうとする試みはうまくいっていて、ファンタジーが、現実に疲れた人間が夢見てしまう、理想の…

「淑やかな悪夢」、「魔の系譜」(谷川健一)、「吸血鬼幻想」(種村季弘)など読む。「淑やかな悪夢」は「黄色い壁紙」「証拠の性質」が良かった。

「冷血」(リチャードブルックス監督)をDVDで見た。 たんたんと出来事が積み重なるのが不気味で、歯車の音が聞こえてくるような気がする。ロバートブレイクの家族の記憶の現れ方が素晴らしく、目に見えない亡霊が画面を漂っているような気がしてくる。殺戮…

「オトシモノ」(古澤健監督)を見た。 スローモーションの使い方、ビデオに映る影、遺失物保管室、トンネルなど、いい所もあったが全体には残念だった。中盤までの展開の早さはよかったが、中盤から失速し、取ってつけたような友情場面は退屈、大事な時に繰…

「恐怖奇形人間」(石井輝男監督)と「女獄門帳 引き裂かれた尼僧」(牧口雄二監督)を見た。 「恐怖奇形人間」は、あの最後のカットで映画館が笑いに包まれてしまう。幼い頃の子守唄の記憶をたどって、たどり着いた場所に若く美しい女がいる、それが醜い男…

「空中庭園」(豊田利晃監督)、耐えられず途中でやめる。全てが説明でしかない。

「私はゾンビと歩いた!」(ジャックターナー監督)。生きる死者と歩く夜の草原。浸食されていく理性。ゾンビであるためには、一度殺されていなければならない。母親は彼女がゾンビであると主張する、それは母親が彼女を殺したという告白なのか、その答えは…

渋谷シネマヴェーラで 「地獄」(神代辰巳監督)に打ちのめされる。 「怪談蚊喰鳥」(森一生監督)緩慢さが不穏さにつながってよかった。

新文芸座で「恋や恋なすな恋」(内田吐夢監督)を見た。 呪術の、いにしえの日本。農民の祭り。大川橋蔵の錯乱ぶり。狐の嫁が障子に、口にくわえた筆で書く恋の歌。

「インモラル」(神代辰巳監督)を見た。不気味な、彼岸の感覚。柳ユーレイの性愛への執着が幽霊たちを呼び出し、世界は賽の河原と化すのだろうか。性愛のユートピアの感覚は一瞬もなく、執着の煉獄の世界は薄明るい。車の座席のカバー、郵便配達、映ってい…

恵比寿で「夜の女たち」(溝口健二監督)を見た。奇妙な映画だった。娼婦ルックが似合わない田中絹代、裸足で塀を越える脱走シーンはなかなかよかった。 「霊魂と旅のフォークロア」(宮田登)、Daniel Schmid のコラージュ本「The invention of paradise」…

ナショナルフィルムセンターで「元禄美少年記」(伊藤大輔監督)、現世では結ばれない女の出る場面は夢と現実の境目が見えない幽玄の世界のようで、その他の場面では非情に身分の差が描かれる。身分差の問題は終盤に消えたようなのは残念だった。 中村賀津夫…

片頭痛で動けない。 受取人不明(キムギドク監督)、面白かった。

楽日(ツァイミンリャン監督)見に行くが、途中で席を立つ。物語、意味から離れようとする行為は虚しいように感じる。「河」が好きだったが、その後一作ごとに気持ちは離れていく。

渋谷で不知火検校(森一生監督)、家で大菩薩峠(三隅研次監督)見る。 不知火検校は勝新太郎の悪党ぶりが素晴らしいがやや緩慢に感じる。森一生監督の映画を見るといつも感じる緩慢さ、しゃちほこばった感じ。 大菩薩峠は内田吐夢監督版と比べながら見る。…

「捨てられる迄」(谷崎潤一郎) 幻想小説のような奇妙な傑作だった。後半はマゾヒストの夢のよう。

谷崎潤一郎「お才と巳乃介」読む。後半くどく感じたがオチがいい。巳乃介の顔の泥。 「妻二人」「刺青」(増村保造監督)。 「妻二人」は分身の物語。岡田茉莉子のキャラクターに涙。「刺青」の若尾文子の啖呵にくらくらする。両方とも早い展開が素晴らしい。

谷崎潤一郎「神と人との間」を読んだ。自分自身のスキャンダルをネタにしながら、自分自身も、妻も、友人=敵である佐藤春夫も、同様に戯画化していく力、観察していく力、人の哀れさとおかしさが同居する。 ユダ(瀬々敬久監督)見るが、やはり演出とカメラ…

目が覚めたら夕方4時だった。睡眠15時間。見たかった映画あったのだが仕方ない。 谷崎潤一郎「マゾヒズム小説集」。「饒太郎」は紙数の関係からか、後半飛ばし書きのようで残念。他、「奴隷の詩学」読む。 新宿で本屋3軒回って「シネマトグラフ覚書」買…